症状
- 鍵盤は普通に下がるが、上がるのが遅い、または途中までしか戻らない
- いくつかの鍵盤がほかより重く硬く感じる(鍵盤の中央付近に多い)
- 夏や雨の多い時期に悪化し、乾燥した時期には良くなる
- 鍵盤が隣の鍵盤や、鍵盤手前の木の板に擦れたり引っかかったりする
考えられる原因
鍵盤ブッシングの膨張
各鍵盤は、小さなフェルトのブッシングが付いた金属ピンを支点に動きます。湿度が高いと木材とフェルトが膨らんでピンを強く締め付け、鍵盤の戻りが遅くなります。
口棒や鍵盤蓋との擦れ
鍵盤の手前にある木の板(口棒)や鍵盤蓋が反ったりずれたりして、鍵盤の前面に擦れることがあります。
鍵盤の下や間の異物
硬貨、鉛筆、クリップ、食べかす、子どものおもちゃがよくある原因です。鍵盤の間や筬(キーフレーム)の下に何かが挟まると、鍵盤の動きを妨げます。
こぼれた液体や糖分の残留物
鍵盤に飲み物をこぼすと、残留物が鍵盤同士をくっつけたり、その下の木材を膨らませたりします。
鍵盤の反りやアクション部品の摩耗
まれに、鍵盤そのものが反っていたり、アクションの部品が渋くなっていたりすることもあります。この場合は技術者の診断が必要です。
自分で安全に確認できること
- 1安価な湿度計で部屋の湿度を測りましょう。相対湿度40〜50%が目安で、60%を超えると鍵盤の戻りが悪くなりやすくなります。
- 2戻りの悪い鍵盤と隣の鍵盤の間を懐中電灯で照らし、見える異物は金属の道具ではなく薄いカードでそっと取り除きます。
- 3鍵盤の手前と、鍵盤蓋に近い奥の方をそれぞれ押してみます。手前だけで引っかかる場合は、口棒に擦れているのかもしれません。
- 4どの鍵盤が引っかかるのか、天候によって変わるのかを正確に記録しておきましょう。技術者の作業時間の短縮になります。
- 5除湿機やエアコンの除湿モードを数日間使い、鍵盤の動きが軽くなるか様子を見ます。
やってはいけないこと
- 鍵盤にWD-40やシリコンスプレー、油類をスプレーしないでください。フェルトに染み込んでほこりを集め、症状を悪化させます。
- ナイフやドライバーで鍵盤をこじ上げないでください。鍵盤の表面が欠けたり、鍵盤が割れたりすることがあります。
- 方法を知らないうちは、口棒やグランドピアノのアクションを取り外さないでください。部品を傷めたり、位置がずれたりしやすいです。
- ヒーターやドライヤーをピアノに向けて乾かさないでください。
自分でできる対処と技術者に任せること
たいてい自分で対処できる
- 除湿機やエアコンで部屋の湿度を下げる
- 鍵盤の間に見える硬貨や鉛筆を取り除く
- 鍵盤の表面に少しこぼした液体をすぐに拭き取る
- どの鍵盤がいつ引っかかるかを記録する
技術者に依頼する
- 部屋を乾燥させても鍵盤の戻りが遅い
- 多くの鍵盤が同時に引っかかる
- こぼした液体が鍵盤の間に流れ込んだ
- 鍵盤が口棒や隣の鍵盤に擦れている
技術者が行う作業
技術者は専用の工具で膨らんだブッシングを緩め、口棒を調整したり薄板を挟んだりして、鍵盤の下の異物を取り除きます。アップライトピアノなら通常15〜45分ほどで、定期調律の際に一緒に行われることもよくあります。液体をこぼした場合や鍵盤が反っている場合は時間がかかり、アクションを取り外す必要があることもあります。
ピアノの弦にはおよそ18〜20トンの張力がかかっています。アクションを開ける、チューニングピンを回す、弦の近くで作業するといった対処が必要な場合は、技術者に任せてください。