ピアノの調律は、技術者が何年もかけて磨く技術ですが、やり方そのものは秘密ではありません。適切なチューニングハンマー、ミュート一式、ピアノのストレッチを理解するチューナー、そしてたっぷりの忍耐があれば、慎重なオーナーなら少しずれたピアノを元の音程に戻すことができます。このガイドでは、技術者と同じ手順で作業全体を説明し、どこで手を止めて技術者を呼ぶべきかもお伝えします。
必要な道具
最低限の道具でも調律はできますが、以下のものはそれぞれ確かな違いを生みます。まずは何よりもしっかりしたチューニングハンマーを買いましょう。
チューニングハンマー(チューニングレバー)
必須四角いチューニングピンにはまるソケットの付いたハンドルです。ほとんどのピアノは#2の星形チップに合います。安価なT字型レンチではなく、固定ヘッドまたは延長ヘッドのしっかりしたハンマーを選びましょう。T字型ではピンの手応えがつかめず、ピンを曲げやすくなります。
Amazonで見るゴム製のウェッジミュート
必須弦と弦の間に差し込んで音を止めるくさびで、調律している弦の音だけを聞けるようにします。少なくとも4つ用意しましょう。アップライトピアノには普通のゴム製ウェッジを使います。グランドピアノでは、1つのユニゾンの弦の間に収まるパップスウェッジのほうが扱いやすいです。
Amazonで見るフェルトのテンペラメントストリップ
必須中音域の弦の間に編み込むように通す長いフェルトの帯です。各ユニゾンの外側の弦をまとめてミュートできるので、割り振りのオクターブ全体で1音につき1本の弦を調律できます。
Amazonで見るストレッチに対応したチューナー
必須ピアノは単純な平均律では調律されません。弦にわずかな硬さがあるため倍音が高めにずれ、オクターブをストレッチする必要があるのです。ギター用チューナーを使うと、高音域が低く、低音域が高く合ってしまいます。Tune In Timeのように、ピアノの弦の硬さを測定してストレッチカーブを計算するピアノ調律アプリを使うか、うなりを数えて耳で調律する方法を身につけましょう。
アプリを入手ドライバーまたは六角レンチ
アップライトピアノの上前板や、グランドピアノの譜面台を外して、ピンやミュートに手が届くようにするためのものです。外したパネルは毛布の上に置きましょう。
懐中電灯
各弦をハンマーからピンまでたどり、チューニングハンマーが正しいピンにかかっているか確かめるために使います。
セットでそろえたい方へ
チューニングハンマー、ミュート、フェルトストリップが入った基本キットは40〜60米ドル程度からあります。プロ用のチューニングハンマーは単体で数百ドルすることもあります。
Tune In TimeはAmazonアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。リンク先はAmazonの検索結果です。購入前にチップのサイズ(ほとんどのピアノは#2の星形)をご確認ください。
自分で調律すべきか?
自分で調律するのが最も理にかなっているのは、前回のプロの調律から少しずれただけで、調律がよく保たれるピアノであり、ゆっくり作業する覚悟がある場合です。まずは測定から始めましょう。ピアノのヘルスチェックなら、ピッチからどれだけずれているか、低音と高音がばらばらにずれていないかが1分でわかります。
- ピッチからのずれが約15セント以内:通常の調律で、このガイドで説明する内容です。
- 平均で約15セント以上低い:まずピッチ上げ、その後に仕上げの調律が必要です。ピアノ全体のピッチを上げると、すべての弦に数十キログラムの張力が加わり、古い弦は切れることがあります。
- ピンが軽く回りすぎる、跳ねる、または保持しない:作業を中止してください。緩んだピンは技術者が対処する必要があります。
- 希少なピアノ、高価なピアノ、アンティークのピアノ:プロに任せましょう。
何を調律するのか
ピアノの鍵盤は88ですが、弦はおよそ220本あります。低音域では各音に1〜2本の太い巻線弦があり、テナー音域から上では各音に3本の弦があって同じ音程に合わせます。これをユニゾンと呼びます。各弦は下部のヒッチピンから駒を越えて、積層木材のブロック(ピン板)にしっかり打ち込まれたチューニングピンまで張られています。ピンとピン板の摩擦が調律を保っているのです。
ピアノの弦には硬さがあるため、各弦の倍音は基音の整数倍より少し高くなります。オクターブをきれいに響かせるため、調律師はストレッチ調律を行い、理論上の平均律に比べて高音域を徐々に高く、低音域を低くします。その度合いはピアノごとに異なるため、固定の表よりも、そのピアノを測定するチューナーのほうが優れているのです。
ピアノと部屋の準備
- 静かな部屋で、ピアノがふだんの温度と湿度になじんだ状態で調律します。移動した直後や、暖房やエアコンの使い方が変わった日には調律しないでください。
- ピアノを開けます。アップライトピアノでは上蓋を開け、上前板を外します(通常は2つの留め具から持ち上げるか、2つのつまみを回して外します)。グランドピアノでは譜面台を引き出します。
- 切れた弦、弦やピンの錆、戻りの悪い鍵盤がないか確認します。作業を始める前に直すか、記録しておきましょう。
- 中音域のおよそF3からF4までにフェルトストリップを通し、3本弦のユニゾンのうち中央の弦だけが鳴るようにします。
チューニングピンの回し方と据え方
技術の大部分は、チューニングハンマーを持つ手にあります。ピンはただ回るのではなく、ピン板の中の部分が動く前に上の部分がねじれます。ねじれたまま放っておくと、数日のうちに元に戻ってしまいます。ピンを「据える」とは、ねじれのない状態にしておくことです。
- 正しいピンを見つけます。鍵盤を弾いてどのハンマーが動くかを見て、懐中電灯でその弦をピンまでたどります。弦をはじくかミュートして確かめましょう。
- アップライトピアノではチューニングハンマーをほぼ垂直(上向きで12時から1時くらいの位置)に、グランドピアノではおおよそ後ろ(テール側)に向けて構えます。ピンと一直線に保ち、ピンを曲げるのではなく回すようにします。
- 動きはごく小さく。数度回すだけで音程は大きく変わります。少しずつ動かし、よく聞きましょう。
- 音程を目標より少し上まで引き上げてから、目標までゆっくり下げます。最後をわずかに下げる動きで終えると、ピンが据わり、弦が安定します。
- 調律した鍵盤を何回か強く弾きます(試し打ち)。音程が動いたら弦が落ち着いていなかったということなので、もう一度合わせます。
ピアノ調律の手順
A4を合わせる
フェルトストリップを入れた状態で、A4の鳴っている1本の弦を目標に合わせます。440 Hzに、チューナーが示すそのピアノ用のわずかなストレッチを加えた値です。
割り振りのオクターブを合わせる
F3からF4までの各音の弦を1本ずつ、チューナーに合わせて調律します。耳で調律する場合は、ここで4度・5度・3度のうなりを数えて音律を決めます。
中音域のユニゾンを合わせる
フェルトストリップを1音ずつ抜きながら、各音の外側の2本の弦を、すでに合わせた中央の弦にそろえます。3本が1つの音として鳴り、ゆっくりした揺れ(うなり)がなくなるまで合わせましょう。
高音域を上へ向かって合わせる
F4から最高音まで順に上がっていきます。外側の弦をウェッジでミュートし、中央の弦をチューナーの目標に合わせてから、ユニゾンを合わせます。新しく合わせた音は、1つ下のオクターブの音と一緒に鳴らして確認します。うなりのないきれいな響きになるはずです。
低音域を下へ向かって合わせる
F3から最低音まで、同じ方法で下がっていきます。最低音域では、チューナーが平均律より少し低い音程を示します。ストレッチを信じ、オクターブと2オクターブを耳で確認しましょう。
ピアノ全体を確認する
鍵盤全体でオクターブを上下に弾き、続いて和音や音階を弾きます。揺れるユニゾンや目立つ音があれば調律し直します。すべての音を何回か試し打ちしましょう。
ピアノのピッチが大きく下がっている場合
ピアノのピッチが大きく下がっているとき、目標までそのまま調律しても保ちません。後半の弦を上げるにつれて、増えた荷重で響板がたわみ、先に合わせた弦がまた低くなってしまうからです。そこで技術者はピッチ上げを行います。各音を目標より少し高めに合わせる(オーバープル)手早い1回目の調律で、ピアノ全体がピッチの近くに落ち着くようにし、その後に通常の仕上げの調律をします。
Tune In Timeアプリには、ヘルスチェックの結果から各鍵盤のオーバープルを計算するピッチ上げモードがあります。古いピアノや、約30セント以上低いピアノの場合は技術者に依頼してください。何年も動かしていない弦こそ切れやすいのです。
よくある失敗
- 違うピンを回してしまう。回す前に必ず弦を確認しましょう。特にセクションの境目では注意が必要です。
- 大きく動かす。感覚に頼って大きく回すと弦が切れます。
- ピンを据えていない。数日で調律が狂うなら、ピンがねじれたまま残っています。
- 1音につき1本の弦しか合わせない。ユニゾンが合っていないと、ピアノ全体が少し低いよりもひどく聞こえます。
- ストレッチ機能のないギター用やクロマチックチューナーを使う。すべての音が緑に表示されても、オクターブで鳴らすと狂って聞こえます。
- 騒がしい部屋や、冷蔵庫やエアコンの音が近くで鳴っている場所で調律する。
技術者を呼ぶべきとき
ピンがほとんど抵抗なく回る、または音程を保たない、弦が切れた、ピン板や響板にひびが見える、大幅なピッチ上げが必要、あるいは問題がアクションにある(鍵盤が戻らない、連打がうまくいかない、音の出方が不揃い)といった場合は、作業を止めてプロに依頼してください。調律では整調や整音の問題は直りません。また、技術者は問題が高くつく前に見つけてくれることがよくあります。
よくある質問
スマートフォンのアプリでピアノを調律できますか?
ピアノ用に作られたアプリならできます。ピアノの弦の硬さ(インハーモニシティ)を測定し、各鍵盤にストレッチを加えた目標値を示すものが必要です。それでもチューニングハンマー、ミュート、ピンを据える技術は必要です。アプリが代わりを務めるのは、音叉と耳の訓練の大部分です。
ピアノの調律にはどのくらい時間がかかりますか?
技術者なら通常の調律で1時間から1時間半ほど、ピッチ上げならさらにかかります。初めて全体を調律する場合は、おそらく3〜6時間かかるでしょう。疲れたら何回かに分けてください。疲れると耳も手も鈍くなります。
自分で調律してピアノを傷めることはありますか?
弦を切ったり、ピンを曲げたり緩めたり、ピアノを以前より不安定な状態にしてしまったりすることがあります。リスクはピアノが古いほど、また各弦を大きく動かすほど高くなります。ゆっくり進め、ピンを1本ずつ確かめ、何かおかしいと感じたら手を止めましょう。
狂っている音を1つだけ調律してもいいですか?
はい、それが最初の一歩として最適です。その音の狂っている弦を、ほかの弦は動かさずに、同じユニゾンの隣の弦に合わせましょう。
ピアノはどのくらいの頻度で調律が必要ですか?
ほとんどのピアノは年に1〜2回の調律が必要です。購入して最初の数年や、湿度の変化が大きい部屋では、もっと頻繁に必要になります。